疲れやすい・汗をかきやすい・体重が減る・動悸・イライラ感、集中力低下・手や指がふるえる・手や足がむくむ こんな方はご相談ください
内分泌内科

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甲状腺疾患

甲状腺の疾患は特徴的な症状が少なく、見逃されやすい場合があります。
甲状腺疾患のうち、橋本病は女性では約10人に1人(男性では0.3人)、甲状腺の腫瘍は超音波検査をすると5人に1人見つかる、非常に頻度が高い疾患です。

甲状腺とは

甲状腺は頸部の前面、のどぼとけの下に蝶々が羽を広げた様な形をしています。

甲状腺では食事で摂取したヨウ素(ヨード)を材料にして甲状腺ホルモンを作っています。甲状腺ホルモンは全身の代謝を調整しています。甲状腺ホルモンの分泌が多すぎても、少なすぎても様々な症状を引き起こします。甲状腺ホルモンは下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって調節されています。

甲状腺の説明イラスト
甲状腺とは

甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンが少ない)の症状

  • 皮膚が乾燥する
  • 気力がなくなる
  • 徐脈(脈拍がゆっくりになる)
  • 動作がにぶくなる
  • 声がかすれる
  • 眉毛や髪の毛が薄くなる

など

低下症も人により出現する症状は様々です。自覚症状が出る前に採血検査で低下症が分かることもよくあります。

主な疾患

橋本病(慢性甲状腺炎)など

甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンが少ない)の症状

甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンが多い)の症状

  • 落ち着かない
  • 下痢
  • 不眠
  • 暑がりになった
  • いつも通り(もしくはいつもより多く)食べているのに体重が減ってきた

など

すべての症状が出現するのではなく、人によって色々な症状がでます。

主な疾患

バセドウ病亜急性甲状腺炎無痛性甲状腺炎など

甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンが多い)の症状

甲状腺腫瘍(甲状腺のしこり)

自覚症状が出ることは少なく、健診で指摘されたり、頸部エコーやCT等の他の検査で偶然見つけられることが多いです。人によっては首の腫れや、首の違和感、声がかすれるといった自覚症状が出る方もいます。

甲状腺の腫瘍には良性の腫瘍と悪性の腫瘍に分けられます。
良性か悪性かの診断には甲状腺穿刺細胞吸引診という検査を行う必要があります。当院では院内でこの検査をすることが出来ます。

主な疾患

良性腫瘍悪性腫瘍など

甲状腺腫瘍(甲状腺のしこり)

バセドウ病とは

甲状腺を異常に刺激してしまうTSHレセプター抗体が体内で作られることにより、甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、甲状腺機能亢進症の症状が出現します。

甲状腺が腫大したり、眼球突出が見られることがあります。あまり強く自覚症状がでない方もいますが、放置すると不整脈や心不全、甲状腺クリーゼという重篤な状態になることもありますので、診断がついたら必ず治療をする必要があります。

検査
採血検査

TSH低値、FT3高値、FT4高値、TSHレセプター抗体高値となります。

甲状腺エコー

甲状腺が全体的に大きく、血流も豊富になります。

バセドウ病とは
治療

大きく分けて、薬物療法手術療法アイソトープ治療の3つの治療方法があります。

第一選択は薬物療法です。
薬物療法でコントロール困難な方、お薬の副作用で内服継続が困難な方には手術療法もしくはアイソトープ治療が出来る信頼できる施設をご紹介しています。
薬物療法は甲状腺ホルモンの合成を阻害する抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール)の内服をします。基本的にはメルカゾールの内服となります。妊娠予定の方や妊娠中、授乳中の方にはプロパジールを内服していただきます。

抗甲状腺薬の主な副作用としては、湿疹、肝機能障害、無顆粒球症などがあります。内服開始してから2、3か月の間は特に副作用が出現しやすい時期ですので、2週間毎に通院していただき副作用の出現がないかみていく必要があります。

定期的に採血の結果をみながら内服量の調整を行います。
治療開始後1、2年の経過で内服を中止出来る方もいますが、内服中止後に再燃する方もいますので、中止して良い時期か否か慎重に見極める必要があります。

亜急性甲状腺炎

甲状腺の炎症です。甲状腺のある部位が痛くなり、熱が出て体が怠くなります。頸部の痛みの強さは個人差があり強いこともありますが、触らないと分からないくらい軽微なこともあります。

甲状腺の触診、採血検査、甲状腺エコーの検査で診断することが出来ます。
症状が強い場合は内服治療をします。2~3か月程度で甲状腺機能は正常化することが多く、再発することはまれです。

無痛性甲状腺炎

橋本病の患者さまに発症することが多いです。何かしらが原因となって甲状腺が破壊され、一時的に甲状腺ホルモンが過剰に分泌されます。亜急性甲状腺とは違い、甲状腺部位の痛みや発熱は認められず、3か月以内に自然に改善します。また女性は出産後に起きるケースもあります。

橋本病(慢性甲状腺炎)

甲状腺に慢性的な炎症が起こり、甲状腺が徐々に破壊され甲状腺のホルモンが分泌できなくなる病気です。しかし橋本病と診断されても甲状腺ホルモンが正常である方も多く、約70%います。橋本病でヨウ素(ヨード)を多く含む食品(昆布、わかめ等の海藻類など)を過剰に摂取すると、一時的に甲状腺ホルモンが低下することもあるので、食事に注意が必要です。

検査
採血検査

抗サイログロブリン抗体もしくは抗甲状腺マクロゾーム抗体(抗TPO抗体)陽性

甲状腺エコー

甲状腺の腫大、不均一

橋本病(慢性甲状腺炎)
治療

甲状腺ホルモンが低下している場合は甲状腺ホルモン剤の内服をしていただきます。抗甲状腺薬とくらべてほとんど副作用は出現しません。定期的に採血検査を行い内服量の調整をします。
橋本病と診断されても、甲状腺ホルモンが正常な方もいます。この場合は内服治療を必要としませんが、いずれ甲状腺ホルモンの分泌が少なくなる方もいるので、定期的な検査が必要です。

良性腫瘍

良性の場合は治療の必要はなく、年に1~2回の経過観察を行います。
稀に大きくなり過ぎて気管支を圧排する場合や、美容上の問題がある際などには手術を考慮することもあります。

主に、腺腫様甲状腺腫と濾胞腫瘍に分けられます。腺腫様甲状腺腫は厳密には腫瘍ではなく「過形成」です。濾胞腺腫は濾胞がんとの鑑別が重要です。

悪性腫瘍

甲状腺の悪性腫瘍は乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、低分化がん、未分化がん、その他(悪性リンパ腫等)に分けることが出来ます。
一番頻度の高い悪性腫瘍は乳頭がんです。甲状腺がん全体の90%以上を占めます。乳頭がんはがんの中では比較的予後の良いがんと言われています。10年生存率も95%以上です。頻度は低いですが未分化がんは非常に進行が早く、予後が悪いため、診断した場合は速やかに治療開始する必要があります。

当院の検査で悪性腫瘍を疑う場合は、信頼できる施設にご紹介しております。

悪性腫瘍
坂井 聡美
担当医師
坂井 聡美SAKAI SATOMI
担当科
内科、小児科、糖尿・内分泌内科、アレルギー科